アンプ(高周波増幅器)の用語解説
1.P1dB(1dB利得圧縮点)
P1dBはアンプの出力性能を表す値です。
◆リニアアンプは入力信号を増加していくと出力信号が直線的に増加します。然しながら、入力信号を徐々に上げていったときに、何処までも増幅できる訳ではなく、いつかは飽和してしまいます。P1dBはアンプの出力段の能力でほぼ決まりますが、何処迄出力可能かの判断を行なう指数がP1dB(ピーワンディービー)です。P1dBの値が大きいほど直線性の良いアンプであるといえます。P1dBは読んで字の如く、利得直線な理想特性に対し1dB利得が低下した点の出力レベルとなります。
◆ネットワークアナライザのパワースイープ機能を利用すると、自動的に利得計算をしてくれます。S21モードで通過特性を出しておき、1dBの利得圧縮点に相当するポイントにマーカーを置きます。そのときの入力レベルPiに利得Gを加えると、P1dB が計算できます。
図2:アンプの特性図その2
2.IP3 (3次相互変調ひずみ:インターセプトポイント)
◆増幅器の性能であるインターセプトポイント(IP3)は、増幅能力(3次相互変調ひずみ)を表わす値で、IP3の値が大きいほど増幅器の直線性が良いことを示しています。
一般に増幅器では、簡単な構成で出力レベルを大きくとりたいのですが歪との戦いになります。このためには使用するデバイスの増幅能力を予め知っておく必要があります。
アンプは単一信号だけではなく、同時に2信号以上入力された場合にもリニアアンプでは十分な直線性が要求されます。通常は使用帯域の近傍2波を入力して、その3次ひずみ成分として現れる現象を3次相互変調ひずみ(IM)といいます。IM成分は帯域の近傍に現れるため、妨害波として信号波に影響を与えることになります。
このアンプの出力端に現れるこの相互変調ひずみ成分は、入力信号レベルが高くなるに従って、その3倍のdB傾斜を持って増加していきます。即ち、希望信号の出力レベルが1dB増加すると、相互変調ひずみ成分は3dB増加します。希望する信号の出力レベルもアンプの飽和レベルに達するとそれ以上増加することは出来ませんが、もしこのアンプが飽和しないとした場合の理想特性とこのアンプの3次ひずみ成分が直線的に増加したとみなしたときの交点を出力レベル値に換算し、その値がIP3となります。通常、IP3はP1dBより10~12dB大きい値となります。
図3はアンプの入出力特性を表しています。インターセプトポイントは図で示すように、アンプの入出力特性、即ち利得G(dB)で決まる増幅特性と、アンプの3次ひずみ成分、即ち勾配が3G(dB)で決まる3次ひずみ成分が等しくなった点です。ここで注意を要するのは、インターセプトポイントまでアンプの増幅能力がないため、IP3はあくまでも仮想の特性なのです。アンプに近接した2信号を加えるとスペクトラムアナライザには図4のようなスペクトラムが観測されます。
この時のIP3は次のように計算されます。IP3=Po+IM3/2仮にf1とf2を同レベルでアンプに入力し、そのときの出力レベルPoを-10dBmとします。次にそのときの相互変調ひずみのレベルを-40dBcとするとIP3=-10+40/2=+10dBmとなります。
3.バックオフ
◆デジタル変調のかかった信号はピーク電力と平均電力の差が大きいため、ピーク電力のマージン度合いを知ってシステム設計を行なう必要があります。このマージンをバックオフといいdBで表現します。バックオフは出力最大振幅レベルと出力飽和電力レベルのデシベル差で表します。バックオフマージンが大きいほどアンプのダイナミックレンジが要求されます。
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