インピーダンス変換器とは
インピーダンス変換器は異なる特性インピーダンス間でインピーダンスマッチングを行う機能を有しています。
通常は50Ωから75Ω、または75Ωから50Ωにインピーダンスを変換します。
インピーダンスを変換する方式には変換トランスによるものと、抵抗によるもの、伝送回路によるものがあり、
用途や周波数帯域によって使い分けされています。
<インピーダンス変換器の接続>
信号源と負荷の特性インピーダンスが異なるものをそのままに接続すると、負荷の入力端で反射が起きますので、
下図の如く経路の中間にインピーダンス変換器を挿入します。
この場合の伝送損失は、インピーダンス変換器の挿入損失を加える必要があります。
インピーダンス変換器の原理
(1)変換トランスによる方法
トランスの巻線比を$\small{N} = \dfrac{N_2}{N_1}$とします。理想トランスの場合、1次側の電力は全て2次側に伝達されるので、2次側から1次側をみた特性インピーダンス$\small{Z_0}$は
$Z_0 = N^2 \cdot R_1$
インピーダンスマッチングさせるためには
$Z_0 = R_2$
ですから、
$N = \sqrt{\dfrac{R_2}{R_1}}$
が成り立つ巻線比のトランスを製作すれば、インピーダンス整合させることができます。
50Ωから75Ωに変換するための巻線比は、$\small{N}$=1.22となります。
(2)抵抗による方法
抵抗によるインピーダンス変換方式は、帯域内での特性が平坦で安定な変換が出来ますが、抵抗による電力損失が生じます。抵抗値は変換する特性インピーダンスにより一義的に決まりますので、損失は計算できます。
50Ω/75Ωのインピーダンス変換器では下図に示す抵抗値となり、挿入損失は5.72dBとなります。
(3)伝送回路による方法
マイクロストリップラインなどの伝送線路を用いたインピーダンス変換回路は、分布定数回路をうまく利用したものとして広く使われており、50-75Ωの変換回路だけではなく、分配器などにも応用できます。
回路例としては、下図のように非常に簡単な回路となります。
回路の入力インピーダンスを$Z_{in}$、出力インピーダンスを$Z_{out}$とすると
$Z = \sqrt{Z_{in} \times Z_{out}}$
となるインピーダンスの伝送線路をλ/4の電気長だけ挿入すれば$\small{Z_{in}}$と$\small{Z_{out}}$をマッチングさせることが出来ます。
例えば$\small{Z_{in}}$=50Ω、$\small{Z_{out}}$=75Ωとすると、$\small{Z}$=61.2Ωとなります。
ここでは、この原理がどのようになっているかスミスチャートの軌跡で見てみたいと思います。
図-スミスチャート上でのインピーダンスの動きは、負荷に、あるインピーダンスの伝送線路を接続したときの入力側からみたインピーダンスの動きを示しています。
この図では、水平線上の下側に円弧が書かれていて、これは75Ωの負荷に61.2Ωの伝送線路をλ/4(90°)時計方向に回転させたものです。これにより、インピーダンスはスミスチャート上の中心の50Ωへ移動していることがわかります。つまり、スミスチャート上では、入力と出力を結ぶ円弧を描き、その中心となる点のインピーダンスが求める$\small{Z}$となります。この回路は、ウィルキンソン分配器などにも応用されるマイクロ波の基本的な回路となりますので、覚えておくと便利です。
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